母とともに立った日々の記録(5)

全11回に分け、週1回を目途に掲載していきます。

第5話 読めずとも「目指せ1000 票!」

亡くなった父の選挙運動を思い出すたびに、わたしは一つだけ不思議な疑問に突き当たり、苦笑してしまいます。周囲が「当選確実。圧勝だ!」と言って盛り上がっていると落選し、「これはダメだ」と嘆いていたら、見事に当選するのです。大きな選挙になると新聞社やテレビ局、通信社がいろんなデータに基づいて事前に優勢・劣勢を報じますが、それでも、予測と結果がときどき異なっています。
事前に「票を読む」って本当にできるのだろうか?他の立候補を予定されている方たちは、もう1、2度済ませておられるのだろうか……ですが、わたしの後援会は「票読みのタイミング」、それどころか「票読み」をどうすれば出来るのかもあやふやな「選挙は初めての素人集団」でしたから、確かに不安にもなりました。
でも、何がしかの目標は持ちたいと、告示日が迫ってきたころ、後援会の世話人会でこっそりはじいたのが、下記の<>内の数字でした。
<投票日の有権者は、女性約16,200 人、男性約13,800 人。
合計で約30,000 票。4年前の投票率は、61.01%。当選最低票は734 票。今回の得票最低ラインは、高齢化で前回より、投票率が下がるものの、新人立候補5人なので当選ラインは上がると見て800 票だろう。目指すは1,000 票とする>
わたしの方は、後援会入会カードの返信があまりにも出来過ぎているので、恐ろしいほどでした。入会者への挨拶もなかなか追いつかず、そうこうしていたら、また入会カードが届くといったことが、告示日の直前まで続きました。
推薦してくれたある労働組合の方たちは、上滑りを警戒していました。「後援会入会カードは、3掛けでみるべし」との見解でした。「1,000 人から戻ってきても、実質は300 票」という受け止め方です。1,000 票欲しければ、3,000 人の支持を目指さなければならないことになります。元公務員だった方々の会もリーフレット配布に協力してくださいました。
選挙運動を何度も経験した高齢者や家族が議員だった方たちから「選挙は投票箱を開けるまで分からないから気を抜いてはいけないよ。油断は禁物。大丈夫は絶対ない」と忠告をいただきました。
ただ、後援会世話人の方たちは、選挙の後「あんた以外はみんなトップ当選を目指していた。それを口にしたら、あんたが緊張するので、伝えるのは控えていた」と明かしてくださいました。
すでに触れましたように、わたしは他の方々と少し違って77 年以上前であっても祖父が町議会議員、そして父が旧山田市長だった点です。このため「しっかりした地盤を持った家の娘さんが跡を継いだ」「憲子さんだけは黙っていても大丈夫やから、こちらにお願い」という困った情報の拡散には手を焼きました。
当選が決まって、みなさんからとても喜んでいただきましたが、何人かからは冷やかし気味に「残念やったねぇ。あとちょっとで2,000 やったのに」と言われました。新人であってもわたしは「半分は世襲候補」、当選しても「半分は世襲議員」のレッテルを張られ続けそうです。それに「たった一人の女性議員」。
女はつらい! でも「これを基礎票に出来たら、間違いなく仲間が増やせるぞ!チャレンジだ!女は強い!」と、密かにあれこれシミュレーションを試みています。