母とともに立った日々の記録(10)
今回が最終回です。
第10 話 「つながり」をキーワードに~締めくくりに替えて~
いま、大都市圏を除いた「地方」のまちやむらはどこも、どんどん縮んでいます。わたしのメモ帳の一部をご覧ください。
嘉麻市では急激な人口減少と高齢化が進行し、過疎化は深刻な状況にあります。なぜ、こんなことになったのか。わたしは、男性のみの価値観、男性主導の長い長い「地域づくり」「地域おこし」が大きな原因ではないのか、と思っています。
この現状をあれこれ考えて浮かんだのが「つながり」という言葉でした。地域づくり、地域おこしのどちらにも欠かせない「キーワードだ」「かぎ言葉だ」と考え、公約の柱に据えて、リーフレットはもちろん、選挙運動中も≪つながりが実感できるまちをあなたと創(つく)りたい≫≪つながりが実感できるまちづくりのために活動します≫と訴えました。公約の中身は7項目に分けて提示し、支持をお願いしました。その一部です。
『育(はぐく)む』=*学習支援を含む子育て支援 *福祉人材の育成 *美術館を核としてまちづくり *農林商工関係者の次世代育成など
『守(まも)る』=*自然、環境、人権、平和 * DV、虐待、ストーカー等被害者 *地域医療・保健事業
『学(まな)ぶ』=*幼少期からのジェンダー平等推進 *防災・減災の教育など。
ご覧の通り、公約は「地域づくり」に偏っています。理由ははっきりしています。歩いてきた道の大半が福祉分野、女性問題分野だったからです。そこでつくづく感じてきたのが「人と人とのつながり」の大切さでした。人は、つながっていなければ、心豊かな生活、安らかな暮らしはできないという現実でした。一方、「つながろうとする意志」があっても、支援がなければ輪に参加できない方、さまざまな事情でつながりに加われない方もおられます。つなぐ役は住民と行政の双方が、つながって担わなければならないのです。
公約では触れませんでしたが、「つながり」は「地域おこし」でも大切な要素になっていると思います。すでに、過疎地域が自分たちの地域だけで何かをするのはとても難しくなっています。今後はますます過疎地の側から都市圏とつながりを持つか、また、近隣の市町村とどのようなつながり(共同事業)を推進していくか、対等な連携と協力の構築に一段と知恵を絞らなくてはならなくなっています。
まだ、具体的な提案はできませんが、福岡県のほぼ中央に位置する嘉麻市は、マイカー利用であれば、県内のすべての地域から1時間半~2時間で到着可能です。この地の利と恵まれた自然環境を生かして市は「アウトドア・シティ宣言」を行い、ゆとりある時間のすごし方や暮らしなどを提案する新しいまちづくりを目指しています。交流人口、関係人口の創出を目的にしており、わたしも福岡や北九州都市圏などを念頭に「つながり」をテーマに何か提案できればと考えています。
ところで、暮らしの場で見ていると、女性は男性よりつながることが得意な気がしています。女性はつながることで力をつけ、蓄え、それをつないで広げていくことができると思っています。
また、わたしたちのふるさとは、もともとは「鎌の里」でした。こじつけかもしれませんが、水がきれいで青空、星空がいっぱいの嘉麻地方では「かま」を手にして、農林業で生計を立てていた方がとても多かったのでは、と想像しています。そこへ近代を迎えたとたん「炭鉱の時代」がやって来て、地域が一気に開かれ、大勢の人であふれ、閉山とともに多くの方が去って行かれました。
「いまは、炭鉱がなかった時代に戻っているだけ」とも言えませんか?生産人口の減少があっても、知恵を絞ればまだまだやっていけます。共感を得られる新たなコンセプトで「つながり」を広げていけると思います。そのためにも男性だけではなく、女性も含めて、多様な世代、さまざまな背景を持ったみなさんとともに、まちを盛り上げていきたいと願っています。合言葉は「平和と人権 対等と協力」でいかがでしょうか。
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このリポートをまとめるに当たり、嘉麻市の議会事務局、選挙管理委員会、総務課、生涯学習課文化推進係、友人の深水薫さん、青山英子さんには、資料の提供や解説、収集をお願いし応じていただきました。ご協力に深く感謝します。貴重なデータの提供、掲載について快諾していただきました「福岡・女性議員を増やす会」さん、「パリテ・ウエーブ・フロム福岡編集部」さん、ありがとうとうございました。
嘉麻市域で女性の政治参画に道を切り開いてこられた城貞子さん(旧嘉穂町議、合併後、在任特例期間は嘉麻市議)、田淵千恵子さん(合併後に嘉麻市議として2期活躍)、藤原優香里さん(旧山田市議の故鍋田フジノさんの孫)、末永康洋さん(旧碓井町議の故末永幸子さんの長男)には、面談にてそれぞれの議員当時のお話しを聴かせていただきました。時代は違っても、地域を思う熱い気持ちとその当時にやるべきことを志しておられた姿に学ぶことが多く、心構えがさらに深まりました。本当にありがとうございました。
最後に、リポートの制作を企画・編集してくださった筑豊北九州地域研究会の宮嶋玲子さんはじめ先輩の方々や、発行を引き受けていただいた地域調べサークル・菊ヶ丘「語ろう会」さんへ心よりお礼を申し上げます(佐伯)。